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文化と文明1(社会、世界、歴史を知ること) -なぜ・なにを・どう学ぶのか-

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2-1.社会、世界、歴史を知ること

すべての人はみな、人と共に生きています。人の集まりを社会と言います。現代社会で生きている私やあなたがよりよく生きるためには、その現代社会について十分に理解する必要があります。現代社会がどのように成り立っているのかを知り、社会に育まれた文化と発展させてきた文明を理解することで、人は社会の中で心地良く生き、満足いく貢献をしやすくなります。それは、現代社会を知ると同時に、現代社会で生きるあなた自身をより深く理解していくことに他ならないと思います。なぜなら、例えば、あなた自身を今いる社会から孤立させると、あなたは今のあなた自身ではいられなくなると思います。さらに、すでにこの社会で育って来た中で、あなたの諸々の側面はこの社会によって形作られており、そのつながりをなかったことにはできないのです。つまり、あなたが社会を形作っていると同時に、社会があなたを形作っているのですから、社会を知ることはあなた自身を知ることに繋がるのだと思います。

現在、世界に視点を広げれば国と国の垣根は下がり、瞬時に必要なことを知ることができ、世界と日本との違いもほとんどないように見えます。日本にいてできないことはない、学べないことはない、そんな気にもなります。しかし、いかに通信網が発達し、交通網が発達しても、依然、日本は日本であり、日本人は日本人の文化と思考を持っています。それは他国民も同じです。自らが学ぼうとしなければ、日本の文化も、他国の文化も学ぶことはできません。どちらも、知っているとたかを括っては、知っているつもりで様々な誤りを起こしかねません。そして、何より自国の文化を知らないことは、自分自身にとっても、自国の文化の良き継承者としても、知らず知らずのうちに大きな損失を抱えることに繋がりかねません。と同時に、他国の文化を知らずに他国と友好な関係を築くことはできないことはもちろんですが、翻って自国の文化をより普遍的な視点で理解するためにも、他国の文化を知ることは重要になります。当たり前と思っている習慣にこそ自国の最大の特徴があることも多く、良い習俗を保ち、悪弊を廃するためには、自他を知り、各人が最善を尽くすことが大事なのだと思います。

何かを学ぶためには、何事でもその過去、歴史を振り返り、源流へたどることがとても大切です。今あることだけを見ていては分からないことが沢山あります。くわえて、人からの伝聞ではどうしても質が落ちることが多くあります。確かに難しいことを簡単にし、新たな工夫を加えて後世の人々が諸々の知恵や学問を発達させるものですが、何かを発見した人ほどその何かに熟達した人はなかなか現れないのが通常です。後世の工夫を学びつつも、自分の手を動かして原典にあたり、その知恵や学問が生まれた瞬間の息遣いを知ることが、勉強を深めるためにはとても重要な作業になります。

大学時代に運よく私は、日本の伝統芸能、とくに東北地方の神楽を知る機会を与えられ、ユネスコの無形文化遺産にも登録された早池峰神楽を地元まで習いに行かせて頂きました。早池峰神楽は古能とも呼ばれ、日本の伝統芸能の中でも古い姿を留めている興味深い神楽です。その舞踊の中には、神道の神話があり、密教的な所作があり、歴史物には人物英雄が語られ、明治期の廃仏毀釈の影響が見て取れる個所もあったと記憶しています。つまり、そこに日本の宗教、政治、社会の変化の多層的な影響をはっきりと見て取ることができ、とても驚いたことを覚えています。日本の芸能のルーツを含んだ早池峰神楽のような伝統芸能を知ると、さらに能や歌舞伎を見ても日本人の芸能に対する息遣い、価値観、系譜のようなものを感じることができます。

伝統芸能に限らず文化とは、このように宗教、学問、政治、その他、諸分野との干渉を持ちつつ、多層性を持って保守的に、現在に至るまで継承されていきます。したがって、歴史を知らなければ文化を理解することはできず、さらにただの出来事の連なりのような、歴史の時系列を学ぶだけでは文化を理解することはできません。宗教なら宗教、学問なら学問、政治なら政治の中身を理解して、初めて歴史を理解し、文化を理解することができるようになるのではないかと感じています。

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公開日時:2016年8月31日
修正日時:2017年3月17日 章立てを追加。
修正日時:2018年1月8日 ページ数、内容を大幅に追加。
最終修正日: 2018年1月8日